2015年05月10日

りんごの町 出会いと観光 (信州の旅)


リンゴの風景( 信州の旅 )

まちに人が訪れる。そこから観光が始まる。

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バイクで一般道をひたすら走る一人の旅は楽しいものだ。
高速道路や有料バイパス道ではないから幾度も幾度も信号機に
つかまりながら、ゆるゆると一人で走るのである。
自動車の旅も鉄道の旅も、そして仲間たちとの旅もそれはそれ
で楽しいものではあるが、バイクの一人旅にはそれとは違った
一味違う楽しさがある。


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高速道路ではフェンス( 壁 )の向こう側に町がある。
一般道なら、町の中に道路がある。バイクを停めて足を下ろせば、
そこは旅先の町だ。その町の薫りがするし、ヘルメットを脱
げばその町の言葉が聞こえる。自分の足で立っている、そこ
だけの風に吹かれ、そこの町並みに浸ることができる。

旅の楽しみと言えば、旅先で出会う 《 偶然 》 がまた楽しい。

お世辞にも美味しいと言えないラーメンに遭遇したり、その
土地で出会った見知らぬ人と話をするのも楽しい。
旅人の私も、その町で出会う人たちも、約束があって
出会うわけではない。

ただ、 偶然 に出会うのだ。

偶然出会っただけなのに、お茶を出してくれる人がいれば、
漬物を食べさせてくれる人もいる。さらには「ちょっと待って!」と、
幾つもおにぎりを握って 「あとで食べなさい」と持たせてくれ
る人もいる。終いには「泊まっていきなさい」と家に招いてくれ
る人たちもいる。

偶然 と出会いがあるから、旅は楽しいと私は思う。

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ある年の秋も深まったある日のこと、信州に出かけた。
若いころの話だ。私の旅ではいつものことだが、宿は予約していない。

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若い頃は、目的のない旅が好きだった。
何が待っているかわからない旅はエキサイティングなのだ。
だからというのも少々強引だが、宿を予約することなく
泊まりの宿はいつも飛び込みだった。

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  宿を予約すると、宿が目的になってしてしまうのが好き
  ではない。「 目的のない旅だ 」 と言いながら、必ず
  そこには予め予約している宿に向かうための行動や道を
  辿る自分がいる。

  「これを食べると宿の食事が食べられなくなる」とか、
   この道順で行けば無駄なく宿まで辿り着ける・・・とか。
   気付かぬうちに、自由なつもりの「旅の行動」は制約され
   てしまっている。そう、見えない約束に縛られているのだ。

   もちろん、素敵な宿に泊まることが旅の目的のひとつな
   らばそれはそれで良い。だが、この頃、若い頃の私の旅に
   その目的は含まれていなかった。そう、「宿泊先の予約」
   自体が(旅の)自由の足かせとなるからだった。

   結局、自由な旅というものを突き詰めた先にあったのは、
   旅館やホテルといった宿泊施設を排除した旅だった。
   そう、野宿をしながら日本を一周するという、若者だった
   からこそできた楽しい旅である。
   ここで野宿を語るのは、またの機会にしたい・・・・。
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そんな調子で宿も決めずに訪れた信州のとある町。とっぷりと日
も暮れた頃、いつものように通りすがりの小さな旅館に駆け込んだ。
「素泊まりをお願いできますか?」
宿の女将は嫌な顔ひとつせずに快く泊めてくれた。泊める側から
すれば至極迷惑な話だろう。

翌朝、ほぼ日の出と共に朝食も摂らず宿を発つ私に、女将が声を
かけてくれた。「途中で食べてくださいな・・・・・」。

その手には真っ赤なりんごがひとつ。




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お礼もそこそこに宿を出た。お礼の気持ちを言葉で上手く伝え
たいのだが、対人恐怖症と自分を思い込んでいる私は人と向い
合うと信じられないほど緊張してしまう。
私は生来のお礼下手なのである。

緊張と、申し訳なさと感謝を胸に、今日はこの町を1日かけて
歩きまわる。できるなら早い時間に沢山まわりたい。陽光の射
角が低い時間は表情の豊かな写真が撮れる。

見事な城と素敵な城下の町並。歴史が幾重にも積み重なってい
るこの町は、見る・聞く・話す・食べる。そのすべてが楽しい。

陽が高くなった頃だった。町外れのガソリンスタンドに立ち寄っ
た。なんと、ここでスタンドのご主人から差し入れをもらって
しまった。

「途中で食べるといいよ」と・・・・真っ赤なりんご。

朝、女将からもらったりんごはポケットの中。
真っ赤なりんごがふたつになった。



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町かどにバイクを停めてしばらく歩いていると、地元のお
婆ちゃんと親しくなった。地元のお婆ちゃんと仲良くなるの
はいつものことだが、あれこれと世間話のようなものを30分
はしていただろう。

別れ際にお婆ちゃんが、持っていた手提げの中から取り出し
たものを私の手に載せてくれた。

真っ赤なりんご。

お婆ちゃんはどこか懐かしい笑顔で「また会いましょう」
と言ってくれた。

秋の信州。
両手で包んだ真っ赤なりんごが冷たかった。



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この町では、秋に人を見送る時にりんごを手渡すことが
習慣なのだろうか・・・・。
「そんなことは・・・・」と思っても、もしそうだとし
たなら、なんて素敵な町だろう。

楽しい旅。偶然の出会い。

旅は常に温かい思いを私たちの心に残してくれる。
その思いを求めて旅に出る人も少なくはないだろう。

旅人が幸せになる観光資源とは何だろう。


・・・・・・・・・・・スタッフ I


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posted by JN01 at 12:10| 日記